■ご案内■
以下の記事は8月16日時点の状況に基づき執筆しました。
8月27日にゼンリンデータコムより「アップグレードプラン」が発表されました。
「ゼンリンデータコムが「いつもNAVI Lite」から「いつもNAVI」へ1,000円でアップグレードプランを発表!」をエントリーしたのでこちらもあわせてお読み下さい。
して本日、「いつもナビ 地図+ルート」が「いつもNAVI Lite」と名称変更された上で、Ver2.0がリリースされました。また、新料金体系についても詳細が発表されました。
8月4日に突然、それまでの「いつもナビ 地図+ルート」ユーザーを無視した新アプリ「いつもNAVI」がリリースされ既存ユーザーからの猛バッシング(詳しくは過去の記事をご覧下さい。)を受けた末、料金体系が発表されたのですが当初予定通りの350円/月でした。(正確には月途中でも月末までで一ヶ月となります。)
一点だけ誠意を見せたと言うならば、8月は残りが少ないため8月の料金のみ115円/月、という事だけ。それ以外は当初発表された内容をそのまま強行突破した形です。レビューの猛烈な批判は一切無視したユーザー軽視の料金体系に強い不信感と失望感を持ったユーザーも多いのではないでしょうか。
もう一度経緯と各アプリの比較、そして問題点をまとめておきたいと思います。最後に既存ユーザー(の大半)が何に怒っているのかも書いておきます。ゼンリンデータコムさん!この点について真剣に耳を傾けないで強行突破をすれば短期的に見れば、買い直しによる「増収」はあるでしょうけれども長期的に見れば損害が出ると思うのは私だけでしょうか。
■ 経緯
- 2009年2月頃 「いつもナビ 地図+ルート」発売
- 待望されたナビアプリと期待されるも音声ナビ、自動リルート検索、道路標識拡大表示が無くがっかりさせられる。
- しかしこれはゼンリンデータコムの技術不足ではなくアップルとの規約上の制限であった。この時点でできるナビ機能を精一杯実現した形と言える。
- 機能的に不安定という報告もあったが、ユーザーは今後の機能追加を期待し、iPhoneアプリとしては高額な1,800円を“投資”という意味合いでも購入していた。
- 2009年8月4日 「いつもNAVI」発売
- 「いつもナビ 地図+ルート」とは別に新アプリがいきなり発売となり既存ユーザーは取り残された形となった。既存ユーザーへの説明が不足し、旧アプリのバージョンアップが送れたことでユーザーの不信感が増幅した。
- 説明不足のまま新アプリの説明画面で「既存ユーザーは350円/月で提供する。」と表記がありその後消去されたことで、さらに不信感が増幅した。
- 新アプリと既存アプリが同時期にリリースができなかったのはアップル側の承認スケジュールの関係なのか不明。(どちらにせよゼンリンデータコムからアナウンスが無かったのが×)
- 2009年8月5日? 「いつもナビ 地図+ルート」の評価欄が炎上
- ★ひとつの評価が大半を占め、炎上の状態となる。
- 「アップルに申請中」と表記があったが肝心な説明が無かったため炎上は続く。
- ★ひとつの評価が256件を超えた時点で増えなくなったためさらに炎上。(これはiTunesストアの仕様か不明)
- 2009年8月16日 「いつもNAVI Lite」リリース
- 「いつもナビ 地図+ルート」がVer2.0となり名称変更。小さな機能追加の他機能改善される。
- これまでの機能はそのまま問題無く利用できる。
- 「ナビパック」搭載。(350円/月・8月のみ115円)ナビパックを購入すれば通常版の「いつもNAVI」と同機能となる。
■ 「いつもNAVI」と「いつもNAVI Lite」の比較
「いつもNAVI Lite」のオプション画面で機能の違いを確認できます。これを元に表にまとめてみました。
いつもNAVI | いつもNAVI Lite | |
---|---|---|
ルート検索 | ○(高速優先、走行速度一般/高速設定可) | ○(高速優先、走行速度一般/高速設定可) |
再リルート機能 | ○自動 | ×手動 |
音声案内 | ○ | × |
道路看板表示 | ○自動 | △手動 |
ルート沿いの地図取得 | ○ | ×(前は無かったっけ?) |
右左折車線案内 | ×(一部ある?) | ×(一部ある?・手動) |
シミュレーション | ×(手動で確認は可) | ×(手動で確認は可) |
ブックマーク機能 | ○(名称設定は不可) | ○(名称設定は不可) |
GPS精度表示(円の大きさで表現) | ○ | ○ |
価格 | 2,800円/年 | 1,800円(ナビパック:350円/月・8月は115円) |
※「いつもNAVI Lite」でナビパックを購入すれば「いつもNAVI」と同等機能となる。
※「いつもNAVI Lite」は「いつもナビ 地図+ルート」と同機能。(一部GPS精度表示など追加された機能もあり。)
■ 問題点と改善策
ずらずらと書きましたが、改めて見てみると「いつもナビ 地図+ルート」を購入された方は、それまでの機能をそのまま使えるわけで1,800円で購入しただけのものは提供されている。と言えます。
iPhoneアプリのこれまでの習慣で「アプリは一度バージョンアップは無料、機能追加は当然だ!」というものがあり今後に期待して1,800円を支払った方も多いと思いますが、普通の買い物をする場合、この考えをする人は少ないのでは無いでしょうか。
AppStoreではその習慣にならうべきだ!という意見もあろうかと思いますが、それはそれまでそのようなソフトが多かっただけで、アップルが推奨しているわけでもなく現に月額制など課金システムを充実させてきています。ソフトウェア会社もつまりは会社であり利益を上げなければ存続ができません。それは落ち着いて考えれば至極当たり前のことなのです。
これは「いつもNAVI」の発売時に感情的に反発したユーザーも多かったですが、この点について多くのユーザーは理解を示しています。今回の問題点は、「地図の更新作業に膨大なコストがかかるのは分かるが進め方が不味かった。」これに尽きます。
年間2,800円が高いというのでは無く、月額350円が高いというのでも無いのです。ゼンリンデータコムはビジネスの進め方を大きく誤ったのです。
- 1,800円で販売してきた「いつもナビ 地図+ルート」はこの機能で提供してきましたので継続して利用いただけます。名称は「いつもNAVI Lite」とします。
- 2,800円/年で新たな機能を搭載した「いつもNAVI」をリリースいたします。
- 音声案内、自動リルート機能が必要な方は1年間ごとに費用が発生する「いつもNAVI」をお使い下さい。それが不要な方は「いつもNAVI Lite」をご利用下さい。
たったこれだけでよかったのでは無いでしょうか。これならばLite版に「ナビパック」なんてややこしい機能を搭載しなくても済んだのです。
余計だったのは既存ユーザーに新機能を使わせる「ナビパック」という料金コースを用意した点でしょう。Lite版がリリースされない時点で価格だけ先走りしてしまったのも最悪でした。価格が既存ユーザーに配慮されていない。と批判が集中してしまいました。落ち着いて考えれば限定機能で1,800円で売り切りでいつまでも使えるLite版はこれはこれで魅力的です。
ここで問題なのが、既存ユーザーと新規ユーザーが混在してしまう点です。新しくLite版を購入した人はこの機能に万足をして購入しているわけですが、既存ユーザーは前述の通り“投資”という気持ちがどこかにあるのです。(ゼンリンデータコムがどう考えるかは別として。)
それらを誰もが納得がいく形にするには、「バージョンアップ版」を作るしかありません。Lite版のユーザーは+1,000円で正式版にバージョンアップができる。というアプリを準備するのです。Lite版で正式版の機能をも使ったのでという事を考えて1,300円くらいでもいいかもしれません。1,800円+1,300円=3,100円(+10%)程度ならば妥当なのでは無いでしょうか。
AppStoreの仕様でLite版のユーザーのみバージョンアップ版を購入できる、という機能が無い可能性がありますが(恐らくこの可能性が高いですが。)、その場合はすっきりと売り切り版(Lite版)と機能追加版(正式版)と分けた方がすっきりとするのでは無いでしょうか。
■ まとめ
このままでは、レビューの炎上は収まらず購入をためらう新規ユーザーが後を絶たないでしょう。突然Pro版の発表やLite版の公開中止の可能性があるのではないか?と不信感を募らせるだけです。
今回の騒動はまだまだ終息の目処が立っていません。ゼンリンデータコムは強行突破に出る予感です。ここは意地にならずちゃんと状況を説明の上、ユーザーの理解を求めるよう努力するべきでは無いでしょうか。