楽天が運営するホームページサービス、infoseek isweb(インフォシーク アイエスウェブ)の無料サービスiswebライトが、2010年10月31日でサービスが終了、翌日の11月1日午前2時をもってコンテンツが一気に消滅しました。ウェブサイトの数は約200万と予想されます。
iswebの歴史は長く、2001年にinfoseekがfreewebを買収、2002年にはHoops!を統合、さらには同年にTripodも統合しました。1998年ころから2002年頃までのフリーホームページの再編の波は今でも記憶に新しいところです。もうそんな前になるのか、と思うほどです。
現在では、Twitter、ブログ、mixi、Facebookとユーザーが情報を発信することは珍しくなくなり、また敷居がどんどん低くなっています。思い返せば2000年前後はブログ登場前で情報を発信したい場合は、自分でホームページを作る必要があったのです。その中で、無料で50MBのディスクスペースを利用でき、しかもPerlまでも使える。これは魅力的なサービス内容でした。
2000年頃からインターネットを始めた人ならば、iswebにお世話になった人も多いのでは無いでしょうか?私はメインコンテンツをiswebで作ったことはありませんが、アカウントを取得し、試しで利用させていただいたことがあります。無料サービスとはいえ、快適な動作で安定した稼働は定評があったのは改めて述べることでは無いでしょう。
このような長い歴史を経て、200万ものユーザーが集まり、まさに膨大なコンテンツが構築されてきたのです。多くの人の知識が詰まった宝の山でありどれほどの時間が費やされたか、想像もできません。
しかし、このコンテンツのほとんどが更新がされない休眠状態だったと思われます。SEO的な話になりますが、更新頻度が低いウェブページは残念ながらGoogleやYahoo!Iの検索結果で表示順位が下がってしまいます。希少価値があるコンテンツの場合は更新頻度が低くてもしっかりとGoogleでも上位にヒットしますが、ほとんどのコンテンツが前者であり検索エンジンにも引っかかりにくい状態になっていたと予想されます。
そうなるとどうなるか?訪問者が減り、広告費が減少する。しかし200万ものユーザーは増えることはあっても減ることはまずない。維持費だけが増え続ける。infoseek、楽天はそんなジレンマに陥っていたのでしょう。
広告費と維持費、これを天秤にかけた結果、「無料サービスの終了」という結論に至ったのは企業判断として仕方ないことだと理解はできます。しかし私が一言申したいのは、この後のことです。
私はいつも言っていることなのですが、ウェブサービスは企業が運営している以上、利益が確保できなくなれば終了することは仕方ないと考えています。問題なのは、ユーザーの情報、コンテンツをどのようにお返しするか、また他のサービスにスムースに移行させられるかという点です。
今回の、iswebライトの件では約2ヶ月前にサービス停止の告知をした上で、その後数回告知し、iswebライトユーザーの広告エリアを使い、ランダムに終了の告知を流したようです。移行方法には2種類あり、1つめは自分でコンテンツをダウンロードし、他のウェブサービスにアップロードする方法。2つめはiswebの有料プランのiswebベーシックへ移行する方法。iswebベーシックに移行すれば2011年10月(予定)まで旧URLから新URLへ転送されます。
なんだか、ちゃんと手順を踏んでいて、移行の手段も用意しているように見えますが、ちょっと待ってください。これはあまりにも乱暴では無いでしょうか。私が問題と考えるのは以下の点です。
- サービス終了の告知からサービス終了まで2ヶ月と期間が短い(移行期間、認知期間が短い)
- iswebベーシックに加入しなければ旧URL転送から新URLに転送してくれない
- 移行サービスの案内が不十分(iswebベーシックへの移行のみ)
順番に説明をしていきたいと思います。
ひとつめの、サービス終了の告知からコンテンツが完全に消滅するまでの期間が2ヶ月とあまりにも短いです。ユーザーの移行期間、認知期間が短すぎるのです。「ユーザー」とはiswebライトのユーザーはもちろん、他のウェブサイトを運営している人、ブロガーも含まれます。
iswebライトのユーザーは放置している人ならなおさら2ヶ月間の間にサービスの終了を気づかない可能性もあります。また移行にも今後の運営方法など検討期間を含め数週間は要するでしょう。
他のユーザーもiswebライトのウェブサイトへのリンクを外したり、新しいサイトへリンクを書き換えるための時間が必要です。
200万ものユーザーが10年もの間に培ってきたコンテンツを移行する期間として2ヶ月という時間はあまりにも短いというのは容易に想像できるでしょう。
ふたつめも大きな欠陥です。皆さんも経験があると思いますが、サイトを移行してURLが変わった場合は、旧URLから新URLへの誘導をするのが一般的です。iswebライトのサービス全体を終了してしまい、コンテンツに全くアクセスができない状態にしてしまうのですから、なおさら新URLへの誘導は必須であると言えるでしょう。
これが、iswebベーシックへ移行した、有料会員だけの特典としてしまうのはいかがなものでしょうか?サービスをこれまで提供してきた義務としてこの機能は有料、無料にかかわらず、1年間はするべきだったのでは無いでしょうか。
さらに移行方法の案内についても、あまりにも不親切。自社の有料プランへの誘導は否定はしませんが、無料サービスだから使っていたユーザーも多いはず。いくつかの移行先の候補を掲載するなどの配慮があってもよかったと思うのは私だけでしょうか。
私が考える、iswebライトのサービス終了に伴う対応方法は、11月1日で旧コンテンツが一切表示されなくなり、iswebライトのページにアクセスをするとサービス終了のメッセージが表示されるけれども、iswebライトのユーザーはFTPでコンテンツのダウンロードができ、また新しいサイトへURL転送が設定できる、というのがよかったのではないでしょうか。FTPのダウンロード可能な期間は半年間、URL転送は1年間というのが妥当かと……。
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長々と書きましたが、今回のiswebライトのサービス終了の件は多くのコンテンツを消失した喪失感は計り知れないのは言うまでもありませんが、infoseek、楽天の閉鎖の手法が納得がいかずひとこと言わせていただきました。
「無料サービスなんだから」という意見は当然あると思いますが、一企業がサービスとして提供している上で、広告費という形で間接的にでも利益を得ていたのも事実です。立つ鳥跡を濁さずとはよく言ったもので、サービスを終了するときこそ、しっかりとした対応が求められるのでは無いでしょうか。
また、iswebライトのサービスが終了をしても、infoseekや楽天の他のサービスはまだたくさんあります。iswebライトのユーザーは、これからもinfoseekや楽天の他のサービスを安心して利用し続けることができるのでしょうか?
今回の件を見ていて、無料サービスの継続の大変さ、サービス終了の難しさを改めて感じました。私も無料・有料にかかわらず、たくさんのウェブサービスを利用させていただいていますが、感謝をしながら使わせていただくと同時に、万が一サービスが終了した場合の代替え策を考えておきたいと思いました。