スーパーのパン売り場には、99円程度のPB(プライベートブランド)商品と、200〜300円程度のNB(ナショナルブランド/ロイヤルブレッド、本仕込、超熟など)が並んでいます。 見た目はほぼ同じですが、価格差が2倍以上になるには、製造工程における明確な物理的理由が存在します。
「何が違うのか」を比較・整理しました。
目次
1. 油脂の違い:植物性か動物性か
最も原価に直結するのが、生地に練り込まれる油脂の種類です。
- 99円ライン(低価格帯)
- 主原料: マーガリン、ショートニング(植物性油脂)。
- 特徴: 原価が安く、風味が淡白。軽い食感(サクサク感)が出やすい。バターの香りは香料で補う場合がある。
- 200円ライン(中価格帯)
- 主原料: バター(動物性油脂)を使用、またはバター入りマーガリン。
- 特徴: 原価が高い。乳脂肪分によるコクと、焼成時の特有の香りが生じる。
2. 発酵プロセスの違い:効率か時間か
パンの膨らみ方を左右する発酵工程において、「時間(コスト)」の使い方が異なります。
- 99円ライン(効率重視)
- 添加物: 「イーストフード」を使用することが多い。
- 効果: パン酵母の栄養源となり、発酵活動を劇的に活性化させる。短時間で安定して膨らむため、大量生産の回転率が上がり、製造コストが下がる。
- 200円ライン(時間重視)
- 添加物: 「イーストフード不使用」を謳う商品が多い(例:Pasco超熟など)。
- 効果: 発酵促進剤を使わないため、酵母が自然に発酵するのを待つ必要がある。製造時間が長くかかり、温度管理もシビアになるため、タイムコストが価格に転嫁される。
3. 水分保持技術の違い:老化(パサつき)の速度
小麦粉のデンプンは、時間が経つと水分が抜けて硬くなる「老化(β化)」という現象を起こします。この速度を遅らせる技術にコスト差が出ます。
- 99円ライン(標準製法)
- 製法: 一般的なストレート法や中種法。
- 物理特性: 水分保持力が標準的であるため、開封後、翌日には水分蒸発が進みやすく、トースト時に「硬い(クリスピーすぎる)」食感になりがちである。
- 200円ライン(高加水製法)
- 製法: 「湯種(ゆだね)製法」などを採用(小麦粉の一部を熱湯で捏ねて糊化させる技術)。
- 物理特性: デンプンが水分を抱え込む構造になるため、焼成後も水分量が維持される。結果、翌日になっても「しっとり感」が持続し、トースト時は「外はカリッ、中はモチッ」というコントラストが生まれやすい。
まとめ:用途による合理的選択
成分表示と物理特性から見ると、価格差の正体は「油脂のグレード」「工場の滞在時間」「水分保持技術」の3点に集約されます。
- 99円の食パン: クリスピーな軽い食感を求める場合や、味の濃い具材を乗せる(ピザトースト等)用途に適している。
- 200円の食パン: 小麦やバターの風味を味わう場合や、翌日以降に食べる(パサつきを避けたい)用途に適している。
「どちらが良いか」ではなく、求めている物性(食感・風味)に合わせて選択するのが合理的です。
