ふと思い出した、昔使っていたパソコン「Panasonic Woody」。 この機種には、CDと同じサイズでカートリッジに入った「PD」というドライブが搭載されていました。
「そういえば、あのツルツルの円盤のどこに、どうやって0と1を書き込んでいたんだろう?」 「書き換えできるディスクと、できないディスクは何が違うの?」
そんな素朴な疑問から、ミクロの世界の物理学を調べてみたら、日本の技術力の凄まじさに改めて驚かされました。
1. そもそも「0と1」はどう記録されている?
CD(CD-ROM)の裏面は虹色に光っていますが、顕微鏡レベルで見ると、実は 「デコボコ(物理的な溝)」 が掘られています。
- ランド(平地): 光がそのまま反射する(キラキラ)。
- ピット(くぼみ): 光が散乱して暗くなる。
この「光が帰ってくるか、こないか」の明滅を読み取って、デジタル信号に変換しています。アナログレコードの溝と同じで、本当に物理的な形があるんですね。
2. 「焼く」とは、焦がすこと(CD-R)
では、買ってきたときはツルツルな「CD-R」はどうやって溝を作るのか? 実は、記録面に塗られた 「有機色素」 をレーザーの高熱で 「焦がしている」 のです。
- 焦げた部分は光を反射しなくなる = 「擬似的なピット(溝)」 として扱われる。
一度焦げたパンが元に戻らないのと同じで、これが「書き換えできない(追記のみ)」理由でした。
3. 何度も書き換えられる魔法(PD・CD-RW)
私が使っていた「PD」や、その後のCD-RWは、「相変化(そうへんか)」 という魔法のような金属の性質を使っていました。 溝を掘るのではなく、レーザーの当て方(冷まし方)を変えることで、金属の状態を変化させます。
- 高温で溶かして急冷: 曇りガラス状態になる(アモルファス)→ 光を反射しない(0)
- 中温で溶かして徐冷: 綺麗な結晶に戻る(クリスタル)→ 光を反射する(1)
物理的に削るのではなく、「曇らせたり、透明に戻したり」 を高速で行っていたのです。これを家庭用PCでやっていたなんて…。
4. 「容量」か「速度」か? 回転制御の秘密
さらに面白かったのが、ディスクの回し方(制御)の違いです。 ここには 「たくさん詰め込みたいCD」 と 「速く読み書きしたいPD」 の設計思想の違いがはっきりと表れていました。
CDの方式:CLV(線速度一定)
CDは、内側を高速で、外側を低速で回すという、非常に面倒な制御をしています。
- メリット: 内側も外側も、データの密度をギチギチに一定にできる。だから、直径12cmに700MBもの大容量を詰め込める。
- デメリット: 離れたデータ(1曲目から10曲目など)を読みに行くとき、モーターの変速(ウィーン…)を待つ時間が必要で、アクセスが遅い。
PDの方式:Z-CAV(ゾーンCAV)
対してPanasonicのPDは、ディスクをいくつかのエリア(ゾーン)に分け、その中では一定速度で回す「ハードディスクに近い」制御を取り入れていました。
- メリット: 回転数を頻繁に変えなくて済むため、待ち時間が少なく、サクサク読み書きできる(ランダムアクセスが速い)。
- 工夫: 外側がスカスカにならないようエリア分けすることで、CD並みの大容量 も確保。
まとめ
Panasonic WoodyのPDドライブは、「髪の毛の50分の1の細さの道を、5km分も走破しながら、バクテリアサイズの焦げ跡を読み書きしていた」 ことになります。
しかも、「大容量」と「高速アクセス」の両立まで狙っていたとは。 懐かしい「マイナー規格」だと思っていましたが、そこには間違いなく、世界をリードした日本の変態的(褒め言葉)な光ディスク技術が詰まっていました。
